ZOOM UP:かわさきの元気企業
第8回 東海技研株式会社 川久保洋社長に聞く[ 2011/06/07 ]
街でこんな経験はありませんか? ● 駅前の商店街に自転車(バイク)をとめる場所がない
● 駅前にとめた自転車(バイク)を盗まれた
● 駐輪場にとめておいた自転車が強風で転倒した
● 朝、駐輪場にとめた自転車の後ろに自転車がいっぱいで、夕方取り出せない
● 商店の前に無秩序にとめてある自転車が多くて通りにくい…

自転車と、回転するゲートを見事に合体した
ネーミング。「クルン」という響きがかわいい。
そんな問題を解決すべくフル回転しているのが、川崎市高津区千年の東海技研。有料駐輪場の設計から設置・メンテナンス・修理まで行なう一貫体制が強みです。
主力は駐輪場のゲート「サイクルン」。一台目の自転車が入ると二台目の侵入を自動的に妨げる回転パネルが入退場を安全で迅速にします。
画期的なのはモーターを使わないシンプルな構造。自転車を押す力でゲートが自然に回ります。逆回転できない構造で、不正侵入も防ぐことができます。停電時には自動でロック解除されるので安心です。
感心するのは、利用料金が異なる自転車とバイクをきちんと識別する機能。タイヤの形状やサイズなどを、センサーで感知して車種を判別します。
使いやすい駐輪場をつくっています 「サイクルン」以外にも駐輪場に設置するさまざまな製品や周辺機器を開発しています。利用者の利便性を追求するだけではなく、管理人の業務を大幅に軽減して、利用者のサービス向上に役立っています。

出荷を待つ精算機と基盤がズラリ。
● タイヤを溝にはめて自転車を固定する電磁ロックシステムの個別式駐輪場…非常時に遠隔操作も可能です。
● 精算機…SuicaやPasmoなどの鉄道系ICカードが使えます。
● 定期更新機…管理人がいなくても24時間いつでも利用者の定期を更新できます。
● パネルタッチ式の管理パソコン…ゲート関連機器の情報管理・定期更新・売り上げ管理などを行います。全情報を管理パソコンに集約させて、各機器に送信します。
東海技研の取り組みは、利用者や管理者の利便性の向上だけではありません。地球環境の危機がますます注目を浴び、自転車が見直され始めている中、自治体や地元と一体となって駐輪場を整備し、放置自転車のないきれいな街づくりを推進しています。
そんなパワーみなぎる会社を訪ねて、代表取締役・川久保さんにお話を伺いました。どんな質問にも、ユーモアあふれる答えがテンポよく返ってきます。経営哲学から人生観まで熱く語っていただいた2時間をまとめました。

社長を囲んで。お昼休みなのに、みなさん
集まってくれました。
大学で経済を学んだ川久保さんが、工場長まで務めた自動旋盤加工会社を退職して、溝口でパートナーと会社を始めたのは1975年。第一次オイルショックの不況のさなかでした。金属挽物業からスタートして、自動旋盤で小さな金属部品をつくるうちに、メカトロニクス開発に将来性を見いだして、電子機器開発・設計の受託生産へと次第にシフトしていきました。
とにかくいろんな仕事をやりました。名古屋名物の和菓子「ういろう」を詰める機械をつくったこともあります。
新聞の広告折り込み機・自動ドアなどの開発を続ける一方で駐車場の発券機に取り組んでいる時に、小さなアパートで研究を重ねて開発したワンボードシーケンサが転機になりました。駐車場管理システムの開発が軌道に乗り始めます。

かわさき企業家賞・川崎ものづくりブランド認定・
発明功労賞・科学技術賞・黄綬褒章。
たくさんの賞は努力の結晶。
ある時、川崎市役所に駐車場システムの設置を提案しました。そこで言われたのが駐輪場の需要です。「自分の考えたものが街のあちこちにある、そんなものを開発したい」と言う技術者のパートナーとすぐに駐輪場の機械設計に着手しました。ゲートシステムも早期に特許出願して開発を進めていきました。これが後に文部大臣から科学技術賞まで受けることになる「サイクルン」です。
今から9年前、川崎駅西口の駐輪場にたったひとつのデモ機として設置したゲートが、多くの人の関心を引きつけて翌年は5か所、2年後には十数か所に増えました。現在は全国300か所以上にまでなり、今日も日本のあちこちで駐輪場を見守っています。
その1 社名の由来は東海地方と関係ない。
意外にも地理的由来はありません。実は読売ジャイアンツの原辰徳監督の出身高校、東海大相模にちなんでいます。甲子園で大活躍した監督が、当時(今もそうですが)社長が大ファンだった読売ジャイアンツに入団したからです。
その2 場所は関係ない。
現在はどこでも道路網がしっかりしています。フットワークが軽ければ、大都市で起業しなくてもデメリットはありません。小さな街でも大きなビジネスが成り立ちます。
その3 アルバイトとパートがいない。
全員が正社員。働きやすい会社である理由がここにもあります。
その4 タイムカードがない。
個人の自主性を重んじる社長の優しさが表れています。
その5 楽しく働くには、お金のために嫌な仕事を無理矢理しない。
「やりたい仕事を自由につくることが大切。人はお金のためだけに働くべきではない」という社長の哲学が生きています。
その6 定年がない。
「年齢を理由に辞めるのは理不尽。元気ならいつまでも働けばいい」という社長の信念がここにあります。
その7 他人の図面で仕事をしない。
創業当初から100% 自社設計とファブレスで開発生産しています。
その8 仕入れの半分は、高津区、宮前区、多摩区、中原区からしか行なわない。
川崎ブランド製品を主に川崎で調達して、地域活性化の一翼を担っています。
その9 努力なくして前進はない。
公益財団法人 日本生産性本部が主催する「実行力ある経営」認証評価取得に挑戦しています。中小企業の経営者が課題解決に向けた実行計画を策定し、半年で計画を達成できたかどうか判断されます。モデル企業として初級「導入」の取得を目指しています。
その10 社員の育成にも余念がない。
「社員全員が公の資格をとろう」が目標です。特に川崎商工会議所主催の「販売士」と財団法人 日本規格協会が運営する「品質管理検定」合格取得に力を入れています。今年の秋に前者は数名、後者は20名近くが受験します。
その11 社長の生年月日は一度聞いたら忘れられない。
昭和16年6月6日。「666」は聖書の黙示録に出てくる悪魔(!)です。こわい悪魔ではありません。
「いいあくま」と覚えましょう。
その12 社長の夢は終わらない。
「長年働いて退職し、起業する社員を援助したい。65歳まで勤めたとしても、最近の65歳は元気です。
老人サロン、子供の遊び場、レストランなどやりたいことがたくさんあります。『老人だけのテニススクールをつくりたい』という人もいます。そんなアイデアを実現するために、当社の資産でインフラを買って場所を提供したい。2〜3年後にNPOを立ち上げて行なう予定です。
二つ目は幼児教育。一生懸命子供を教える先生を育成したい。『ごめんなさい』と『ありがとう』を素直に言える子供を育てなければなりません」
社長の夢は、まだまだ続きます。

同じ敷地内の関連会社 「陽報」のメンテナンス課。

となりは製造課。
こちらにも技術者がたくさん。
会社を健全に運営してゆくための代価を生み出すものであり、この善し悪しが会社の命運を左右するものである。本来仕事は辛かったり、苦しかったりするもので、面白かったり、楽しいものではないが自分の責任を全うし、全力を出し切って完遂したときには充実感と爽快感の得られるものである。
そして成し遂げた自分が一歩向上成長するものでなくてはならない。仕事は人生の大きな部分の時間を費やすものなのだから、自分にとってやりがいがあり、納得して出来るものでなくてはならない。
この様な仕事と仕事場を私達は作り出さなくてはいけない。(社内資料より)

写真撮影に笑顔で応じてくれました。

お昼休みをとる人、黙々と仕事を続ける人…。
時間の管理は自分で行ないます。
月刊ニュースレター Parking Concierge

その名も「駐車場の管理人」。
管理人も人から機械へ。
「コミュニティサイクル」「メンテナンス特集」「導入実績集」など毎回異なるテーマをとりあげています。見開き2ページの短い記事で素人にも楽しく読めます。
社長のエッセイも面白く、どこを読んでもぶれていない人生観に、川久保さんの人柄をかいま見ることができます。一部を抜粋すると…
● 今の世の中から「愛」が欠落しかかっていると思います。家庭に、友人間に、企業の中に、日本の社会全体に「愛」が強く蘇れば生きていてよかったという社会が必ず復活すると信じます。
● 何か問題がおこるとすぐに、社会が悪い、政治が悪い、学校が悪いとの論調がマスコミを賑わすが、私は本当に駄目なのは、自分自身だと思います。
● お金を稼ぐのが人生ではありません。すべての人がこの時代に生きていて良かったと思えるような社会をつくりたい。
● 小さな約束をきちんと守ろう。小さな約束を守れなければ大きな仕事を正確に遂行することは困難。
● 宇宙の塵、ごみを回収し、きれいな空気を取り戻し…いつまでもかぐや姫を思い、団子を食べながら月見がしたいと思います。
東海技研株式会社 代表取締役
川久保 洋(かわくぼ ひろし)さん

ユーモアあふれる川久保社長。構えや衒いのない
人柄が魅力です。鮮やかなネクタイに黒いスーツも
おしゃれ。
あなたの人生をつくってください。
「昔はどこの駐車場にも管理人のおじさんがいましたが、コインパーキングができてから、都会の駐車場はまたたく間に無人になりました。駐輪場の管理も機械化される時代が確実に来ます。
また、リーマンブラザーズの破綻や東日本大震災が起きて、世の中が経費節約をより重視するようになりました。私たちの駐輪場管理システムは、人件費削減を推進します。機械化の流れは止められません。駐輪場の中は機械に任せて、働く人は街に出る。放置自転車防止や撤去、モラルの指導をすれば、老人の雇用が増えます。ワークシェアリングにもつながります。

どんな長い格言よりも、心に響く言葉です。
会社は働く人の人間性を育てるところです。従業員が育っていくのを見ることが私のやりがいです。しっかり生きていれば、仕事もプラーベートもうまくいきます。逆にプライーベートを大事にしないようでは、仕事もうまくいきません。
今年入社した30名を超える社員と、次に入って来られる方々にも強調するところです。
積極的でやんちゃな人に来てほしい。
あなたの人生を真剣につくってください」
日本全国に300機以上も設置されている「サイクルン」。私の自宅付近にもあるかと探してみたら…。
ありました!3キロ離れた京王新線・幡ヶ谷駅前高架下のバイク駐輪場です。想像していたよりもコンパクト。

奥にとめてあるのは放置自転車ではありません。
私の自転車です。

バイクが入って開いた瞬間をパチリ!
東海技研株式会社★〒213-0022
神奈川県川崎市高津区千年541-4
★ TEL:044-754-0851

看板にもやっぱり「サイクルン」。
最寄り駅はJR 南武線「武蔵新城」。

取材に協力してくださった、経営企画室 課長
菅原 淳(すがわら じゅん)さん。
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